主イエス・キリストの系図

マタイによる福音書 第1章1~17

2016年12月18日(日)
日本基督教団尾張一宮教会 聖日礼拝説教
矢部節牧師

 今日からマタイによる福音書を読み始めます。まず、系図が出てくるので戸惑う人もいるでしょう。この系図という語は「創世記」という意味でもあり、主イエスの誕生が天地創造に対応する出来事と考えられ、新約聖書の最初に置かれたのでしょう。また、系図は、旧約聖書との橋渡しでもあります。

 この系図の特徴は、まず、アブラハムに始まり、ダビデとバビロン移住で三つの時期に区切られていることです。それぞれが十四代なのは、完全数七の二倍で、時が満ちたことを表しています。

 アブラハムは、主から祝福の源となるように祝福を受けました。「地上の氏族はすべて、あなたによって祝福に入る」と言われていました。すべての人へと祝福が受け継がれていくための系図であるということです。

 ダビデは「あなたの王座はとこしえに続く」と約束されました。しかし、系図に「ウリヤの妻」(バト・シェバ)が出てくるのは、ダビデの姦淫の罪を表しており、そこにイスラエルの罪が代表されています。続く名前は王たちの名前ですが、悪い王も少なくありません。そして、ついに、罪を繰り返すイスラエルへの裁きとして、バビロニアによって王国が滅ぼされ、捕囚にあいます。しかし、それで、神の約束が反故になったのではなく、神の裁きは悔い改めに導くためで、神の憐れみによって、エルサレム神殿は再建され、約束が途切れることなく受け継がれることが系図によってあらわされています。

 男性の名前の系図に女性たちの名前が出てくるのは、特別な意味が込められているはずです。ただ、はっきりとした共通点はありません。いろいろな事柄を思い出させることで、妻たちがいたことをも思い起こさせます。

 ユダの息子たちの罪によって、途切れそうな系図がタマルによってつながれました。

 カナン人ラハブによって、ヨシュアに導かれたイスラエルの民はカナンの地に住むことになります。そこがユダ王国となります。

 ルツは詳しくは「ルツ記」をお読みいただくとしても、彼女はモアブ人であり、異邦人によって系図がつながれていることを意味します。

 系図では、ヨセフがマリアの夫と呼ばれています。マリアが聖霊によって身ごもったのなら、血のつながりがないのではないか。婚約も結婚も神の前の誓約であり、血のつながりよりも大切なことです。マリアが天使の御告げを「この身になりますように」と受け入れ、そのマリアを妻としてヨセフが受け入れることで、系図が主イエスにつながります。そして、わたしたちが主イエスを受け入れるとき、わたしたちも神の子としてこの祝福の系図に連なるのです。